優秀賞10作品-③

 今生きているあなたは偉い
                    ね こ

 

 私は小学生の時にいじめにあいました。典型的ないじめを6年間受け続けました。まだ未熟だった心に与えた傷は、何年経っても私を苦しめています。何回も死にたくなりました。だけど私は生きています。生きていれさえすれば、どうにかなるから。ここからは私の体験談を綴りたいと思います。

 小学校一年生のとき、ボス的な存在の男の子に標的にされ、私と目があったら頭の上からレンガが落ちてきたなどという噂を流されました。その日以来、同級生は誰も私と目を合わせてくれなくなりました。まだ6歳だった私にとってそれはあまりに辛いことでした。それ以降、私は大学生になった今でも人と目を合わせることが苦手です。

 進級していくにつれいじめがヒートアップしていきます。菌扱いをされるようになりました。私が触ったものには見えない菌がついていて、それを触ったら何かに感染するようでした。ですからみんな私の菌を互いになすりつけあっていました。小学生にとって一番の大イベントである、席替えは私にとっては地獄でした。私と席が隣になると、こいつと隣とか最悪と言われ、必ず机同士に隙間を空けられたからです。ですから自分から隙間を開けるようになりました。
 
  わざと私の前を通り何度も何度も吐く真似をされました。毎日臭いと言われました。ブスと散々言われました。あからさまに避けられました。授業の一環で作成した名刺を交換した際、私のものがビリビリに破れました。授業のグループワーク中に貧乏そうな人を指さそうと提案され、全員が私を指差しました。
 「〇〇〇〇、お前の名前、昨日デスノートに書いてん!」
 デスノートにも書かれました。普通は傷つくことだと思います。しかし壊れ切った心の私は自分の名前を覚えてくれていたことに喜びを感じていました。

 いじめを受けている人間は、自分がいじめられているということを恥じるのです。強がっていじめられていないふりをします。いじめられている子とは嫌われている子ということ。ただでさえ自尊心を失っているのに、自分はいじめられている、嫌われていると認めてしまうと、もう生きている価値などないと思い込み、なんとか必死に紡いできた命の糸がプチっと切ってしまいそうになるのです。

 私は親にも先生にも相談せず一人でかかえこんでいました。
 
 もし、教育関係者の方がこの文章を読んでいたら、いじめられているかもしれないと思った子がいた時、「いじめられることは恥ずかしいことではない」ということを伝えてあげてください。彼、彼女は誰にも言えず一人で抱え込んでいる可能性が高いです。

 私はいじめがなくなって友達もたくさんでき、恋人にも愛され、幸せに過ごしています。ですがちょっとしたトリガーがあるとフラッシュバックで苦しくて苦しくてどうしようもなくなる時があります。感情を出せずひたすら耐え続けた当時の自分に代わるように、涙が出て止まらなくなるのです。

 いじめを受けた側は、完全に克服することは本当に本当に難しいことだと私は思います。一生克服できないかもしれない。それでもこの世界で生きていかなければなりません。

 もし、この文章を読んでいる方の中に今いじめを受けている、あるいは過去にいじめられた経験のある方がいらっしゃったら私は声を大にして言いたい。

 あなたは今生きていて本当に偉い。

 おそらく何度も死んでしまおうと思ったはずです。リストカットで自分の体を痛めつけたり、オーバードーズをしてしまったりしたこともあるかもしれせん。それでも今生きているあなたに私は最大の敬意を示します。

 何度も死ねと言われたら、自分なんて生きている価値がないのかなと思ってしまいますよね。
いじめてきた奴らが平然と生きている中、なぜ自分だけが辛い思いをしなければならないのかと思いますよね。

 私も、生きる価値がないと何度も思ったし、何事もなかったかのように生活しているいじめっ子を目にすると本当に腹が立って仕方がなかった。

 だから私は奴らより幸せになると決めました。たくさん勉強して、難関と言われる国公立大学に合格しました。受験期もフラッシュバックが起きましたが、そんなときこそ勉強に励みました。努力すれば、目標があれば、生きている価値があると実感できたから。あなたも勉強に限らず、スポーツや趣味を極めてみたり、仕事にやりがいを見つけたりしてみてください。

きっとあなたは自分の生きる価値を見つけられます。

 最後に、あなたは70兆分の1の確率、つまり宝くじ1億円に100万回連続で当選する確率で生まれてきました。

 あなたの存在は奇跡です。どうか、生きる価値のない人間などと思わないでください。どうか、視野をあと少しだけ広く持ってください。世界はあなたのことを絶対に必要としています。

 どうか、あの世に突っ込みかけているその足を後ろに引いてください。ゆっくり大きく深呼吸を10回してみましょう。世界に80億人いるのだからその中であなたを必要ないと思う人なんて限りなくいないと言ってもいい。大丈夫。あなたの味方はたくさんいます。
 
 これからともに生きる意味を見つけていきましょう。



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